DeNAは、1999年の創業以来、モバイルゲームでの成功やプロ野球球団の運営など、日本のエンターテインメント産業に深く関与してまいりました。
その一方、2016年に発覚した医療情報キュレーションサイト「WELQ」の問題は、企業としての信頼性と情報の扱いに対する深刻な課題を浮き彫りにし、そしてSEO界に激震を走らせたことは誰の記憶にも新しいと思います。
DeNAを率いる南場智子氏は、成長過程で現場主導の経営を徹底したと思われ、現場に任せることでのびのびとした事業展開を可能にしたものの、自身がWELQ等の会見で「愕然とした」というほど状況の詳細把握ができておらず、管理の甘さが致命的な問題を引き起こしたともいえます。
この記事では、DeNAの光と影を象徴する成功と挫折、そして影響について考えてみたいと思います。
モバゲーとDeNAの急成長
2006年、DeNAはモバイルゲーム市場に参入し、「モバゲータウン(Mobage)」をリリース。携帯電話が急速に普及し、若年層を中心にゲームとSNSの融合が受け入れられ、DeNAはここで一気に成長します。特に「怪盗ロワイヤル」のヒットを通じて、DeNAはモバイルゲーム市場をけん引する役割を担いました。
収益モデルとして導入された「課金システム」は、ユーザーが無料でゲームを楽しみつつも、追加要素に課金する形をとり、DeNAに莫大な収益をもたらしました。この成功により、DeNAは多くの資金を得て、さらに新たな事業への投資が可能となります。
※課金システムについての功罪も語ればキリがないのですが、今回はWELQに光を当てて見ていきます。
多角化によるキュレーションメディアの陥穽
2015年、DeNAはモバイルゲームに続く成長分野として、キュレーションメディア事業に着手しました。
NAVERまとめなど、ネット情報を切り貼りするコンテンツが主流となっていくのは、インターネット上の情報が膨大となっていく中で、ある意味では必然ともいえるものでした。
DeNAは医療情報を中心に、ユーザーが検索しやすい形で信頼性のある情報を提供することを目指し、「WELQ」をはじめとする複数のキュレーションメディアを立ち上げました。
そしてその思惑はヒットし、サイトのランクが高いWELQは、どのような医療コンテンツでも検索上位に来るという無双状態を繰り広げました。しかし、そのような無双状態において、出鱈目な記事が検索上位に上がったまま放置されるという事態に至り、信頼性において大きな問題が露呈しました。
WELQ問題の発覚大炎上
「WELQ」は、医療や健康に関する情報を大量にまとめたサイトでしたが、内容の信頼性や正確性が欠けており、多くの記事が科学的根拠を伴わないものでした。その原因は作者が不詳で、誰でも投稿できるようなプラットフォームであったからです。
無論、一部の記事には他サイトからの無断転載や、オカルトにも近い荒唐無稽な内容も含まれていたことが、メディアや医療関係者の間で批判の嵐を呼びました。
この批判が広がり、DeNAは2016年にWELQを含むキュレーションメディア事業全体を停止するに至りました。WELQ問題はDeNAにとって大きな打撃となり、信頼性を損ねたことで、企業としてのイメージにも大きな影響を与えました。
WELQ問題とDeNAの組織体質
WELQ問題が露呈した背景には、DeNAの現場主導型の組織体質があったと考えられます。南場氏は、DeNAの成長に伴い、現場に大きな権限を与え、トップからの管理を最小限に抑える経営スタイルを取っていました。このアプローチはモバイルゲーム事業で大きな成果を上げた一方で、医療情報という信頼性が特に重要な分野においては、厳格な管理が欠けていたことが問題となりました。
南場氏がWELQ問題を事前に把握していなかったことは、DeNAが急成長する中で、社内のコミュニケーションや危機管理体制に課題を抱えていた証といえます。企業としての成長が進む一方で、情報の伝達や品質管理の欠如が浮き彫りになったのです。
WELQがSEOを根底から覆した
WELQ問題は、SEO業界にも大きな影響を与えました。検索エンジン、特にGoogleは、WELQ問題を契機に、医療や健康情報の信頼性を高めるためにアルゴリズムを改良し、専門性や信頼性の低い情報が検索上位に表示されにくくなるよう調整しました。
これにより、医療情報に限らず、コンテンツの質やE-A-T(専門性、権威性、信頼性)がSEO戦略において重要視されるようになり、低品質なキュレーションメディアが淘汰されていく時代が到来しました。
真面目に記事を書く人が救われる、そのような時代が到来したのはひとえにWELQのおかげともいえるのです。ただ、実はWELQを徹底的に潰そうと考えた勢力はアフィリエイター勢であったこともあり、このSEO大変動の際に、共倒れになったという説もあります。特に健康食品系のアフィにおいてWELQは邪魔で、「すっきりフルーツ青汁」つまり青汁王子の高単価案件が売れないので、目の上のたんこぶとされていたように思います。
DeNAに見る光と影
DeNAの歴史は、急成長と挫折、そして再起の物語といえます。南場氏の現場に任せる経営スタイルは、モバイルゲーム事業の成功をもたらした一方、WELQ問題ではその限界が露呈しました。結果として、プロ野球運営や多角的な事業展開で成功を収めた現在のDeNAには、現場主導の利点とリスクの両面が刻まれています。
DeNAは、良くも悪くも現場に権限を与えた体質を通じて、光と影を伴いながら成長を続けてきました。この企業文化こそがDeNAの強みであり課題でもあります。
ある意味では賭けの人生ともいえるDeNAの未来は光かそれとも影か、間違いなくSEOという世界を巻き込んだDeNAの今後にも目が離せません。