ペットボトルジュースや砂糖を含む清涼飲料水(SSBs)は手軽に購入できるため、幅広い層に人気があります。しかし、その健康リスクについては多くの研究が行われており、いくつかの問題点が指摘されています。本記事では、これらの飲料の健康被害について、最近の研究結果をもとに詳しく解説します。
PET(ペットボトル)の分子構造と特徴
PETは、エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合反応によって形成されるポリエステルです。その化学式は (C10H8O4)n で、繰り返し単位は以下のような構造を持ちます。
n [-O-CH2-CH2-O-C(=O)-C6H4-C(=O)-]
この分子構造により、PETは以下の特徴を持ちます:
- 透明性: PETは優れた透明性を持ち、内容物が見やすい。
- 強度と耐久性: 高い引張強度と耐衝撃性を持つ。
- バリア性: 酸素や二酸化炭素の透過を防ぐため、飲料の風味を保つ。
- 軽量性: 比重が小さく、運搬や取り扱いが容易。
PETの毒性や問題点
PET自体は食品接触材料として安全性が高いとされていますが、以下の点において問題が指摘されています:
- 添加物の移行: PET製品には製造工程で様々な添加物が使用されることがあり、高温条件下や長期間の使用でこれらの添加物が内容物に移行する可能性がある。
- ビスフェノールA(BPA)の影響: PET自体にはBPAは含まれていないが、リサイクル工程で混入する可能性があると指摘されている。BPAは内分泌かく乱化学物質として知られ、ホルモンバランスに影響を与える可能性がある。
- マイクロプラスチックの生成: 使用や廃棄によりPETが分解され、微細なプラスチック片(マイクロプラスチック)が生成される。これらは環境中に広がり、生態系や人間の健康に影響を及ぼす可能性がある。
- リサイクルの限界: PETはリサイクル可能だが、繰り返しリサイクルすることで物性が劣化するため、限界がある。また、リサイクル率が十分でない場合、廃棄物問題が深刻化する。
ペットボトルジュースと代謝異常症候群
ペットボトルジュースの摂取と代謝異常症候群(MetS)の関連性を調査した研究によれば、頻繁にペットボトルジュースを摂取することがMetSのリスクを増加させることが示されています。
具体的には、週に5回以上摂取する場合、MetSの発生率が有意に高まることが報告されています (Ferreira-Pêgo et al., 2016)。
タイプ2糖尿病との関連
ペットボトルジュースの消費がタイプ2糖尿病(T2D)の発症リスクと関連していることが示されています。水や生ジュースに置き換えることで、T2Dの発症リスクが低減することが分かっています。
また、1日1杯以上のペットボトルジュースを摂取すると、T2Dのリスクが33%増加することが明らかになっています (Fresán et al., 2017)。
金属汚染によるリスク
ペットボトルジュースには、アルミニウムや鉛などの金属が含まれている場合があり、これらが健康リスクを引き起こす可能性があります。
ペットボトルジュースにアルミニウムや鉛などの金属が含まれている場合がある理由はいくつか考えられます。
- 製造過程での汚染:製造設備やパイプラインに使われる金属材料から微量の金属がジュースに移行することがあります。
- 包装材料からの移行:ペットボトル自体が金属を含むわけではありませんが、キャップやシールなどの包装材料に金属が使われている場合、その金属がジュースに移行する可能性があります。
- 環境汚染:果実や原材料が栽培される土壌や水源が鉛やアルミニウムで汚染されている場合、これらの金属が果実に吸収され、それがジュースに含まれることがあります。
- リサイクル材料の使用:リサイクルPETを使用する際に、他の材料が混入することがあり、その中に金属が含まれている場合があります。
特に、いくつかのジュースでは鉛の濃度が米国食品医薬品局(FDA)の基準を超えていることが報告されています (Tvermoes et al., 2014)。
放射線リスク
ペットボトルジュースには天然の放射性物質(ラドン)が含まれていることがあり、これが肺や胃がんのリスクを増加させる可能性があります。
トルコで行われた研究では、ジュースに含まれるラドンの濃度が評価され、その結果、子供や成人に対する放射線被曝リスクが報告されています (Jamasali et al., 2023)。
内分泌かく乱化学物質(EDCs)の影響
ペットボトルジュースには、ビスフェノールA(BPA)やフタル酸エステルなどの内分泌かく乱化学物質が含まれている場合があり、これらがホルモンバランスに影響を及ぼす可能性があります。
特に、高温での保存条件下ではこれらの化学物質の移行が増加することが報告されています (Aneck-Hahn et al., 2018)。
砂糖を含む清涼飲料水(SSBs)の健康リスク
砂糖を含む清涼飲料水の消費は、さまざまな健康リスクと関連しています。
- 糖尿病リスク: 砂糖を含む清涼飲料水の消費が2型糖尿病のリスクを増加させることが示されています。砂糖を含む飲料を1日2杯以上摂取する人々は、糖尿病のリスクが33%増加することが報告されています (de Koning et al., 2011)。
- 心血管疾患リスク: 砂糖を含む清涼飲料水の消費は、心血管疾患(CHD)のリスクを増加させることが示されています。これらの飲料を週に2回以上摂取する人々は、CHDのリスクが20%高くなることが分かっています (de Koning et al., 2012)。
- 肥満およびメタボリックシンドロームリスク: 砂糖を含む清涼飲料水の定期的な消費は、肥満やメタボリックシンドローム(MetS)のリスクを増加させることが確認されています。これらの飲料を1日1杯以上摂取することが、MetSの発症リスクを26%増加させることが示されています (Malik et al., 2010)。
- その他の健康リスク: 砂糖を含む清涼飲料水の消費は、高血圧やがんリスクの増加とも関連しています。高血圧のリスクを10%増加させることが示されており (Qin et al., 2020)、またがんリスクの増加も示唆されています (Arroyo-Quiroz et al., 2022)。
結論
ペットボトルジュースや砂糖を含む清涼飲料水の頻繁な摂取は、代謝異常症候群、タイプ2糖尿病、心血管疾患、肥満、メタボリックシンドロームなどのリスクを増加させる可能性があることが多くの研究で示されています。
また、金属汚染や放射線リスク、内分泌かく乱化学物質の影響なども考慮すべき重要な健康リスクです。これらのリスクを軽減するためには、これらの飲料の摂取を控え、水や生のフルーツジュースに置き換えることが推奨されます。