とあるマラソンランナーが、42.195キロを走るのは大変だが、目の前の木を目標に走っていたらいつの間にか着いている、といった名言を話していたといいますが、私はそれが誰の言葉だったのか、思い出せません。
しかしこのことはすべての物事において示唆に富んでいます。それは大きな物事も分割することによって、完成に道筋が見えるという考え方です。
そして、この考え方は催眠の世界にも応用することができます。なぜならば催眠は最も深い状況を理想とするのであれば、その催眠深度に至るまでの道のりは極めて長いとされるからです。
例えば、一朝一夕で自己催眠をマスターすることができるのであれば、これほどに生きづらさに打ち震えることはないでしょう。催眠を深めて潜在意識とうまく付き合っていくのは、決して簡単なことではなく、険しい道のりなのです。
ABC法
ABC法というは正式な名称ではありませんが、これは催眠の深さを3つに分割して、自分の位置を認識しながら深めていくことを目標として考案されたものです。
以下は催眠誘導の一例です。自己催眠にするために、文言を調整することも可能です。
現在いるレベルからA層へ。
あなたが現在いるレベルよりも深く、より快適なリラックスの3つのレベルがあります。それぞれをレベルA、レベルB、レベルCと呼びましょう。レベルCは最も深い催眠レベルであり、レベルAが最も軽いレベルです。
レベルAに到達するために、美しい日にハンモックに横たわっている自分自身を想像してみてください。横たわっている自分自身を想像する際に、空にはいくつかの白くふわふわの雲が浮かんでいると思ってみてください。架空の風がハンモックを揺らし始め、遠くの雲が浮かび上がっていきます。
心がその雲に従いながら、あなたはレベルAに入っていくのです。ますますリラックスし、美しい催眠状態に漂い始めます。レベルBに進む準備ができたら、右手の指の一本を上げます。
レベルB層へ
あなたは今、レベルBに進む準備ができました。レベルBに到達するために、あなたの人生で幸せな素晴らしい時期を思い出してみてください。それは子供の時であるかもしれませんし、学生自体の時であるかもしれません。大人になってからの時間かもしれません。
幸せな時間について考えてみてください。異なる人々が異なる時期を思い浮かべます。誰かは休日や誕生日、卒業、結婚、旅行、または賞や栄誉を得たことを思い浮かべるかもしれません。他の人は友人や親戚とのシンプルな時期を思い出すかもしれません。
どのような種類の幸福を思い浮かべるかは重要ではありません。それはあなた自身の幸せな思い出なのです。その特別な時期を思い出すと、レベルAよりもさらにリラックスしたレベルBに入っているのです。
あなたはレベルBをとても楽しんでいます。さらにレベルCをもっと楽しむでしょう。レベルCに進む準備ができたら、右手の指の一本を上げてください。
レベルC層へ
あなたはレベルCでたくさんのことを成し遂げることができます。レベルCに到達するために、さらに一度、レベルBで考えていた幸せで素晴らしい時期を想像または思い出してみてください。
その素晴らしい時間を思い浮かべ始めると同時に、その時に感じていたポジティブな感情について考えてみてください。どのように感じたかを思い出してみてください。
過去の幸せな感情を取り戻し始めてください。その幸せな美しい感情を再現してください。幸せな、美しい感情を思い出し始めると、あなたはレベルCに到達しているのです。
あなたは素晴らしい存在です。あなたは同時に集中し、リラックスする能力を持っています。何年にもわたって、リラックスできるが集中できない人々を見てきました。あるいは、集中できるがリラックスすることができない人もいました。
あなたは集中し、リラックスする能力を持っています。そう、あなたはレベルCにいる権利を持っています。
大事なのは層を定義し、心を見ること。
例えば瞑想やクンダリーニ【クンダリニーとは】第三の目・サハスラーラが拓く「超能力開発」あのカルト教祖も影響を受けた開眼法についてにおいては、レベルがありますが、このレベル分類よりもシンプルなのがこの考え方です。
我々はともすれば、催眠の段階を体の部位なども含め、多様な分岐を用意ししがちです。
ABC法は、ある意味においては発想をより近代化し、シンプルにしたものといえるでしょう。
リラックスと集中した状況が催眠の目標とするところですが、そこに至るための道筋を分割させ、心理的にそのような状況に至りやすいようにしています。